就業規則の作成

 就業規則は、労働条件についてのルールをまとめたものです。スポーツに当てはめると、「ルールブック」に相当します。
 当事務所では基本的に、就業規則の作成・変更は下記の観点でみていきます。

|1.就業規則の内容が現行の労働法令に該当しているか。
|2.会社のリスクを軽減するような規定を作成する。
|3.会社の実態を反映させる。
 当事務所は、業種、企業規模等さまざまな顧問先を受け持つ経験から、貴社の状況に最も適した就業規則を作成いたします。
 以下、正社員、パートタイム労働者等雇用形態別に就業規則の法的ルールをまとめております。ご参照ください。
正 社 員

■記載事項
 就業規則の内容を検討する場合は、次のルールが労基法で定められているので、これに従って作成していきます。(労基89)

1.
絶対的必要記載事項(必ず定めなければならない事項)

2.
相対的必要記載事項(定めをする場合には、記載しなければならない事項)

■絶対的必要記載事項とは
 絶対的必要記載事項とは、必ず就業規則に記載しなければならない事項です。次に掲げる事項は、必ず記載してください。

1.
始業および終業の時刻、休憩時間、休日、休暇、労働者を2組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項

2.
賃金(臨時の賃金等を除く)の決定、計算および支払いの方法、賃金の締切りおよび支払いの時期、昇給に関する事項

3.
退職に関する事項(解雇の事由を含みます)

メモ

1.
労働時間、賃金、退職に関する事項は、労働条件の中で最も重要なものになります。応募時や採用時には必ず従業員へ明示してトラブルの原因にならないようにしましょう。

2.
労働者の職種等によって始業・終業の時刻等が異なる場合は、就業規則に規定するのも実務上は、一苦労になります。下記の観点でまとめられないか検討してみるとまとめやすくなると思います。

・職種別にまとめられないか検討してみる
 →(営業、事務)
・場所別にまとめられないか検討してみる
 →(本社、工場、営業所)
・雇用形態別にまとめられないか検討してみる
 →(正社員、パートタイマー)。

パートタイマーの始業・終業の時間については、画一的に定められない場合は、基本となる始業・終業の時刻を定めかつ具体的には個別の労働契約等で定める旨の委任規定を定めればよいとされています(昭63・3・14基発150、平11・3・31基発168)。

■相対的必要記載事項とは
 相対的必要記載事項とは、次の事項について定めをする場合は就業規則に記載しなければならない事項です。

1.退職手当に関する事項
2.臨時の賃金および最低賃金などに関する事項
3.労働者の食費、作業用品その他の負担に関する事項
4.安全衛生に関する事項
5.職業訓練に関する事項
6.災害補償および業務外の傷病扶助に関する事項
7.表彰および制裁の種類および程度に関する事項
8.以上のほか、事業場の従業員のすべてに適用がある事項

*8については、会社で独自に定める試用期間や休職期間等が該当します。

■任意的記載事項
 上記記載以外にも、会社で自由に記載することができます。例えば、会社の理念や制定の目的等を記載することができます。記載する場合は、就業規則の前文で記載するとよいでしょう。

■別規程
 就業規則には、絶対的必要記載事項と相対的必要記載事項の両方を記載しなければなりません。しかし、1つの規則に収めるには相当なボリュームになります。そのため、それぞれの記載事項について別々に規則を作ることが認められています。ただし、別の規則も就業規則の一部とみなされます。

パートタイマー

 労基法では、労働者を雇い入れる際には、労働条件を明示することが事業主に義務になっています。特に「契約期間」「就業場所」「賃金」等の明示が義務付けられています(労基15)。パートタイム労働法では、これらに加えて「昇給の有無」「退職手当の有無」「賞与の有無」の3つを明示することを義務付けました(パートタイム労働法6)。雇用契約書だけでなく就業規則においてもこれらについて、パートタイム労働者として統一的に扱える部分があれば記載しておきましょう。

派遣社員

 派遣中の労働者は、画一的な労務管理を行わない事項については、就業規則にその枠組みと具体的な労働条件の定め方を規定すればよいとされています。ただし、具体的な労働条件の定め方等は、書面の交付により明示する必要があります。(昭61・6・6基発333、平11・3・31基発168)。

女性の場合

なし

高齢者の場合

 高年齢安定法で原則65歳までの継続雇用が義務になりました。継続雇用の方法としては、(1)再雇用制度(現に雇用されている高齢者が希望するときは定年後も引き続き雇用する制度)(2)定年の延長(3)定年の廃止の3つがあります。そのいずれかを就業規則にその旨を記載する必要があります。(高年齢雇用安定法9条)

そ の 他

■罰則
 絶対的必要記載事項の一部を欠く就業規則又は相対的必要記載事項のうち記載すべき事項が欠いている場合は、30万円以下の罰金に処せられます(労基120. 昭25・2・20基収276、平11・3・31基発168)。